農地を別の目的で使いたいけど許可が必要なの?について解説します!:②農地法第4条(地目変更・自己転用)

前回は農地法第3条について解説しました。

今回は農地法第4条について解説していきます。

目次

農地転用とは?:農地を農地以外にすること

農業の担い手不足や耕作放棄地の問題が深刻化する一方で、農地の一部は宅地、工場、道路、駐車場などの農業以外の用途に利用されることが求められます。この、農地を農地以外のものにすることを「農地転用」といいます

食料の安定供給と優良農地の保全という重要な目的を持つ農地法は、この農地転用についても厳しく規制を設けています。その規制の中心となるのが農地法第4条と第5条です。

農地法第4条は、農地の所有者自身が、その農地を農地以外の用途に転用する場合のルールを定めています。例えば、自分の農地に自宅を建てる、駐車場にするといった「自己転用」がこれに該当します。

例えば相続で農地を相続しても相続人が会社員等で農家ではない場合は、その土地を宅地にして家を建てたり、駐車場にするなど、別目的で活用することを検討する方が多いと思います。

農地法第4条の概要:所有権を変えずに地目だけを変える

農地法第4条第1項は、「農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならない」と定めています。

第3条との大きな違いは、所有権の移転(売買など)を伴わない点です。所有者が農地を所有したまま、その目(用途)を農地から宅地などへ変更する行為に対して、知事等の許可を義務付けています。

この規定の目的は、優良な農地を無秩序に転用から守り、国土の計画的な利用と、農業生産力の維持・確保を図ることです。許可を受けずに転用を行った場合、工事の中止や原状回復命令の対象となるほか、罰則が科せられる可能性があります。

許可の基準:立地基準と一般基準

農地転用の許可基準は、農地の区分に応じて転用の可否を定める「立地基準」と、転用事業の計画が適切であるかを審査する「一般基準」の2つから成り立っています。

1. 立地基準:農地のランクによる区分

農地は、その立地条件や営農条件のランクに応じて、以下のように区分され、原則として上位ランクの農地からの転用が抑制されます。

農地の区分転用の規制概要
農用地区域内農地原則不許可農業振興地域内の特に農業生産に重要な農地。
甲種農地・第1種農地原則不許可集団的で優良な営農条件を備える農地。
第2種農地例外的に許可相当の規模を持つ農地だが、将来的に市街化が見込まれる農地。
第3種農地原則許可市街地の区域内、または市街化の傾向が著しい区域内の農地。

上位ランクの農地(農用地区域内農地、甲種・第1種農地)は厳しく保護されており、転用が認められるのは、公共性の高い事業や極めて限定的なケースに限られます。

2. 一般基準:事業計画の確実性

転用計画が実現可能で、周辺環境に悪影響を与えないことが求められます。

  • 転用事業の確実性: 転用に必要な資金や資力、信用があること、他の法令による許認可の見込みがあることなど。
  • 周辺農地への被害防止: 転用によって、水路や農道など周辺農地の営農条件に悪影響を与えないよう、適切な措置が講じられていること。

関連する法令との関わり:都市計画法・建築基準法

農地転用を考える上で、農地法以上に重要となるのが、都市計画法や建築基準法などの関連法規です。農地法による「転用」が許可されても、これらの法令による「開発行為の許可」や「建築確認」がなければ、目的とする建物を建てたり、宅地造成を行ったりすることはできません

  • 都市計画法: 市街化区域、市街化調整区域などの都市計画上の区分によって、建築できる建物や開発行為の規制が異なります。
    • 市街化調整区域では、原則として開発行為や建物の建築が厳しく制限されます。農地転用が許可されても、都市計画法の許可(開発許可)が得られなければ事業は進められません。
    • ただし、市街化区域内では、農地転用について第4条の知事等許可は不要となり、事前に農業委員会への届出で済むことになっています。これは、市街化区域は市街化を積極的に進める地域であるためです。
  • 建築基準法: 建築物の敷地、構造、設備、用途などに関する最低限の基準を定めています。建物を建てる際には、建築確認を受け、この法律の基準を満たす必要があります。

農地転用は、これらの法令を多角的に検討し、適切な手続きを踏むことが不可欠です。

まとめ

今回は農地法第4条について解説しました。次回は農地法第5条で、売買・貸借を伴う農地転用の手続きについて解説します。

農地法第4条に基づく自己転用は、特に市街化調整区域内や優良農地に近い場所では難易度が高く、立地基準の判断が複雑です。

また、土地改良区や農業委員会との協議が必要なこともあり、手続きも非常に煩雑なものとなります。

当事務所では、お客様の転用計画を踏まえ、農地法だけでなく、都市計画法や建築基準法との整合性を確認し、複雑な関係法令の手続きを一括してサポートすることで、円滑な農地転用を支援します。
※地目の変更登記は提携する土地家屋調査士をご紹介いたします

農地を宅地や駐車場としての利用をご検討の方は、まずはご相談だけでも構いません。
お気軽に当事務所までご連絡ください。
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