「お店を開くには保健所の許可が必要」ということは多くの方がご存じですが、実はそれだけでは不十分なケースが多々あります。特にお客様とのコミュニケーションを重視するスタイルのお店では、「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」という非常に高いハードルを越えなければなりません。
今回は、埼玉県内でスナック、ラウンジ、パブ、あるいは接待を伴うバーなどの開業を検討されている方に向けて、基本となる「飲食店営業許可」から、専門性の高い「風営法第1号(社交飲食店)」の許可まで、申請にあたって必ず押さえておくべきポイントを、埼玉県のルールを交えて分かりやすく解説します。
最初のステップ:保健所の「飲食店営業許可」
どのような形態であれ、お客様に飲食物を提供する以上、まずは保健所から「飲食店営業許可」を取得する必要があります。これは食品衛生法に基づき、店舗が衛生的に運営できる状態にあるかを審査されるものです。
審査のポイント(埼玉県での一般的基準)
- 調理場の区画: 客室と調理場が明確に仕切られていること。
- 二槽シンク: 食器洗浄用のシンクが2つ以上必要。
- 手洗い設備: 調理場内およびトイレに、消毒液固定容器付きの手洗い器があること。
- 食品衛生責任者: 1店舗に必ず1名、資格保有者を置くこと。
この許可は「衛生面」の最低条件です。接待を行う場合は、さらに警察署が管轄する風営法の許可が必要になります。
風営法第1号「社交飲食店」とは何か
いわゆる「接待」を伴う飲食店は、風営法第1号の許可が必要です。
「接待」とは、特定のお客様の横に座ってお酌をしたり、談笑したり、カラオケを一緒に歌ったりする行為を指します。これを行う場合、たとえ営業時間が深夜に及ばなくても、許可を受けなければなりません。無許可営業には非常に重い罰則が課せられます。
【補足:深夜酒類提供飲食店との違い】
「接待は一切しないが、深夜0時以降もお酒を出したい(バー、居酒屋など)」という場合は、風営法1号ではなく「深夜酒類提供飲食店」の届出となります。「接待をするなら1号(原則深夜0時まで)」「接待しないなら深夜届出(24時間OK)」という使い分けが基本であり、両立はできません。
許可を受けられない人:人的要件(欠格事由)
風営法の許可を受けるには、申請者(法人の場合は役員全員)や管理者が、法律で定められた「欠格事由」に該当しないことが条件となります。主な欠格事由は以下の通りです。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 1年以上の拘禁刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の拘禁刑若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
- 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
- アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
- 心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施することができない者
- 風俗営業等の許可を取り消されて5年を経過しない者
申請時に提出する「身分証明書」や「登記されていないことの証明書」、さらに警察による照会によって厳格に審査されます。
埼玉県特有の「場所的要件」:保全対象施設からの距離制限
風営法許可において、最も高い壁となるのが「場所」の制限です。埼玉県では条例により、学校や病院などの「保全対象施設」から、以下の直線距離が離れていなければ営業できません。
埼玉県における保全対象施設からの距離制限一覧
| 施設の種類 | 第2種地域 | 第3種地域 | 第4種地域 | 第5種地域 |
|---|---|---|---|---|
| 学校(大学を除く) | 100m | 70m | 70m | 50m |
| 大学、図書館、病院、入院施設のある診療所、児童福祉施設、特別養護老人ホーム | 70m | 50m | 50m | 30m |
- 第1種地域: 都市計画法上の低層住居専用地域、中高層住居専用地域、住居地域、準住居地域、田園住居地域など。風俗営業は原則禁止です。(上の一覧表には入っていません)
- 第2種地域: 第一種地域、第三種地域〜第五種地域以外の地域。
- 第3種地域: 都市計画法に定められる商業地域(第四種および第五種地域を除く)。
- 第4種地域: さいたま市大宮区宮町4丁目の一部、川口市西川口1丁目の一部
- 第5種地域: さいたま市大宮区仲町1丁目及び2丁目
このように、繁華街の核心部である「第5種地域」であっても、距離制限が完全に無くなるわけではありません。病院や児童福祉施設等からは30メートルの距離を保つ必要があります。また、第4種地域においては、これらの施設から50メートルの距離が必要ですので、物件選びには細心の注意が必要です。
お店の設備要件
お店の設備にもいくつか定められた要件があり、確実にクリアする必要があります。主に以下のような要件があります。
- 客室の内部が店の外部から容易に見通すことができないものであること。
- 客室が複数ある場合の床面積を1室16.5㎡以上とすること。和室の場合は1室9.5㎡以上とすること。
- 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと(おおむね1mを超える衝立など)
- 営業所内の照度が5ルクス以下とならないようにすること
行政書士に許可申請代行を依頼すべき理由
風営法申請は、単なる事務作業ではありません。行政書士に依頼することで、以下のようなリスクを回避できます。
- 精密な図面作成: 警察の現地調査(実査)では、少しの誤差も指摘の対象となります。
- 徹底的な地点照会: 住宅地図に載っていない「認可外保育園」や、ビルの一室にある「小規模診療所」の有無、さらに実際に現場を目視確認することにより徹底調査します。
- 空家賃の最小化: 申請から許可までは2ヶ月弱かかります。書類の不備で受理が遅れれば、その分収入がないまま家賃だけが発生します。
まとめ:埼玉県での開業を成功させるために
埼玉県は関東圏の中でも最も許可取得がシビアだと言われています。しかし逆に言えば、埼玉県での開業=各種法令をしっかりと遵守したお店であると証明することにもなり、信頼度の高さにつながります。
様々な要件をしっかりとクリアし、早々にお店のオープンを迎えるためにも、オーナー様はメニュー開発や宣伝等に力を入れ、保健所や警察署といった官公署とのやり取りは専門家である行政書士にぜひご相談だください。
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