令和7年12月施行!改正建設業法の重要ポイントと対策について解説します

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なぜ今、建設業法が改正されるのか?

建設業界は、長年の多重下請構造や長時間労働、そして技能労働者の高齢化・減少という深刻な課題に直面しています。さらに、昨今の急激な資材価格の高騰は、下請業者や技能労働者の賃金にしわ寄せが及ぶ懸念を高めています。

こうした状況に対し、国は建設業の魅力を高め、将来にわたって必要な担い手を確保するため、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(改正建設業法)を制定しました。

この改正法のうち、建設業者や発注者(注文者)の契約実務に直接関わる特に重要な規定が、令和7年12月12日からいよいよ施行されます。

今回はその重要ポイントと対策を分かりやすく解説します。

改正の核となる「3つの重要項目」

今回の改正建設業法で特に注目すべきは、「不当な取引の是正」に焦点を当てた以下の3つの項目です。これらは、元請・下請を問わず、すべての建設業者様、そして建設工事の発注者様にも適用される可能性があります。

1. 不当に低い請負代金の禁止

これが今回の改正の最大の柱と言っても過言ではありません。

従来の建設業法では、発注者(注文者)が、自己の取引上の地位を不当に利用して、工事の通常必要とされる原価に満たない金額を請負代金とする契約を締結することを禁じていました(ダンピング規制)。

【改正のポイント】 今回の改正では、この規制が受注者である「建設業者」にも拡大されます。

  • 建設業者(受注者)による原価割れ契約の禁止
    • 建設業者は、自らが請け負う建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはなりません。

これは、下請業者が元請業者に対し、「原価割れであることを知りながら、その契約を締結すること」も原則として禁止されることを意味します。たとえ下請業者がその金額に「納得した」としても、適正な労務費などが確保されない価格での契約は、法律上許されなくなります

💡 例外規定(正当な理由)

  • 国土交通省令で定める正当な理由がある場合は例外とされます。具体的には、「自らが保有する低廉な資材を建設工事に用いることができる場合」などが想定されていますが、労務費の適正な確保は常に求められるため、例外の適用は厳格に判断されるでしょう。

2. 著しく短い工期の禁止

長時間労働の是正は、建設業における喫緊の課題です。工期ダンピングは、その大きな原因の一つとされてきました。

【改正のポイント】

  • 受注者である「建設業者」に対しても、著しく短い工期による請負契約の締結が禁止されます。
  • 従来、発注者に対してのみ適用されていた「工期の適正化の義務」を、建設業者(受注者)にも義務付け、発注者・受注者双方に適正な工期設定の責任を負わせることで、現場の負担軽減を図ります。

3. 建設工事の見積書の作成の厳格化

不当に低い請負代金や短い工期の契約を防ぐためには、適正な見積もりとその根拠の提示が必要です。

【改正のポイント】

  • 見積書への法定記載事項の追加
    • 請負契約書の記載事項として、資材高騰等に伴う請負代金等の「変更方法」が追加されます。
  • 見積時の内訳明示の徹底
    • 国土交通省は、特に労務費の基準を明確化し、内訳明示を徹底させる方向で取り組みを進めています。

発注者から、見積もりについて通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回るように変更を求められ、その条件で契約を締結した場合、発注者に対して国土交通大臣等による勧告の対象となる可能性があります。この勧告の対象となる下限金額は、政令で500万円と定められました。

これらの改正は、不適正な価格交渉や工期設定が、下請業者の経営や現場の労働環境に与える悪影響を、発注者だけでなく、受注者側も意識して排除することを強く求めています。

建設業者が今すぐ取り組むべき2つの対策

施行は目の前ではありますが、改めて必要な準備について確認してください。

1. 契約・見積もり体制の抜本的な見直し

最も重要なのは、「原価割れ」の契約を避けるための体制構築です。

(元請業者様)下請代金の算定根拠の明確化

下請契約を締結する際、提示された金額が、その工事に必要な適正な労務費、材料費、その他の経費をカバーしているかを厳しくチェックする体制が必要です。

「労務費に関する基準」を参考に、下請業者から提出される見積書の内容を精査し、「不当に低い」と判断される場合は、再交渉を行う必要があります。

(下請業者様)見積書作成の徹底的な見直し

自社の適正な原価(特に労務費)を正確に把握し、その内訳を明示した根拠のある見積書を作成するよう徹底してください。

不当に低い代金での契約を求められた場合、改正法を盾に適正な金額での再交渉を求める姿勢が重要になります。

資材高騰リスクへの対応

請負契約書に、原材料価格の著しい変動が生じた場合の、請負代金変更に関する具体的かつ明確な条項を必ず盛り込んでください。

2. 社内コンプライアンスの強化と周知徹底

法改正の内容を、契約担当者だけでなく、現場の所長や営業担当者など、全ての関係者に周知徹底することが必要です。

研修の実施

「不当に低い請負代金」「著しく短い工期」の定義が、改正法によってどう変わったのか、社内で具体的な事例を交えて研修などを実施するとよいでしょう。

通報・相談窓口の活用

国土交通省は、改正法に違反する行為に関する通報制度の活用を促しています。社内でも、不当な取引を求められた際の相談ルートを確保しておくことで、法令順守の体制を整えることができます。

まとめ

今回の改正を単なる「規制強化」と捉えるのではなく、「適正な利益と工期を確保し、優秀な人材を呼び込むための追い風」と捉え、前向きな体制構築に乗り出すことが、今後の生き残りの鍵となります。

現実としてなかなか対応が難しいところもあると思います。特に中小、零細企業の建設業者は日々の作業に追われ、大手との二極化がさらに進行することが懸念されます。

当事務所では埼玉県越谷市を中心に、関東一円で活躍されている建設業者様を支援しております。
建設業許可取得、経審支援による事業拡大と信用向上、補助金活用によるDX推進など、お悩みであればぜひご相談ください。

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