ブルーカラービリオネアが日本の建設業にもたらすものは?について考察します

今、建設業界は歴史的な転換期にあります。資材価格の高騰、人件費の上昇、深刻化する人出不足。さらに、働き方改革関連法によって導入された2024年問題への対応と、困難な課題が山積している状況です。

しかし、この厳しい状況だからこそ、新しく登場した「ブルーカラービリオネア」という概念に注目すべきです。これは単なる肉体労働者の高収入化を指すのではありません。現場の熟練の技を土台として、ドローンやAIなどの最新技術を取り入れ、効率的で高収益を実現する経営の仕組みを考え、業界そのものを進化させるというものです。

このアメリカ発の概念が、日本の建設業にどう波及していくのか、現状の課題と対策を踏まえつつ考察してみたいと思います。

目次

建設業倒産件数の増加

現在、建設業界を取り巻く経営環境は非常に厳しくなっています。

倒産件数の深刻な増加

帝国データバンクの調査によると、2024年1年間における建設業の倒産件数は1,890件にのぼり、過去10年間で最多を更新しました。特に小規模な事業者が大半を占めています。2025年上半期も986件と前年同時期の917件を上回る件数で推移しています。

この倒産件数の背景には、主に以下の「四重苦」があります。また、政治が不安定な状況にあるため、今後の見通しが立てづらい状況にあります。

  • 資材価格の高止まり(インフレ倒産): ウッドショックや円安の影響などにより、建築資材価格が継続的に高騰しています。
  • 人件費の高騰(人手不足倒産): 建設業の有効求人倍率は、全業種の平均を大きく上回り、慢性的な人手不足が続いています。職人の確保・維持にかかるコストが経営を圧迫しています。
  • 2024年問題の影響: 時間外労働の上限規制(年960時間)の適用により、これまで人手不足を長時間労働で補ってきた企業の収益構造が崩れ始めています。
  • 後継者難: 経営者の高齢化に伴う事業承継問題も倒産の一因となっており、「後継者難」を理由とする倒産も建設業が最多となっています

大手・中小の二極化の進行

一方で、国土交通省の建設工事受注動態統計調査(大手建設業者50社対象)を見ると、2024年度の建設工事受注総額は4年連続の増加となり、公共工事・民間工事が共に増加しましたが、特に公共工事は国の機関の増加が牽引しています(出典:国土交通省「建設工事受注動態統計調査報告(令和6年度)」)。

このデータが示すのは、需要自体は堅調であるものの、その恩恵は体力のある大手企業や特定の技術を持つ専門業者に集中し、小規模事業者はコスト増と人手不足に苦しむ「二極化」となっています。

日本の建設業に「ブルーカラービリオネア」は期待できるのか

しかし、この厳しい状況は、裏を返せば参入障壁と希少性が高まったことを意味します。このピンチをチャンスと捉え、生き残りをかけて変革を遂げた企業には、「ブルーカラービリオネア」の実現が見えてきます。

AI時代に「人にしかできない」仕事の価値が急上昇

アメリカで話題となっている「ブルーカラービリオネア」は、AI(人工知能)の進化によって事務職などのホワイトカラーの仕事の需要が低下する一方で、物理的な世界を構築し、維持する仕事の価値が再評価されている現象です。

複雑な建物を建てるための熟練した技術や、現場に合わせた即座の判断力、職人が持つ実地スキルは、AIが最も得意とする「デジタル世界」ではなく、私たちが生きる「アナログ世界」を動かす根幹です。

特に日本では、都市再開発や老朽化したインフラの整備が喫緊の課題となっており、これらの物理的な課題を解決できる「高度なブルーカラー」は、ますます重宝されるようになるでしょう。

国による生産性向上への追い風

国土交通省は、建設現場の生産性向上を目指し、ICT(情報通信技術)の全面的な活用を推進する「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を強力に推し進めています。

これは、ドローンによる測量、ICT建機による自動施工、AIを活用した進捗管理などにより、労働人口の減少を上回る生産性の向上を目指すものです。

この国の政策は、建設業のビジネスモデルを変革する追い風となります。ICTを導入し、生産性を飛躍的に高めた事業者は、少ない人員でより多くの利益を生み出すことが可能になります。

「ブルーカラービリオネア」への進化

それでは、激しい二極化の波を乗り越え、ただのブルーカラーから「ブルーカラービリオネア」へと進化するために、どんなことが必要となるのでしょうか。

「情報」と「技術」による生産性の飛躍的な向上

生き残りの鍵となるのは、労働集約型からの脱却です。

  • ICT・DXへの投資: i-Construction関連技術(3D測量、遠隔臨場など)の積極的な導入により、現場の省人化、効率化を徹底します。国や自治体の補助金等をうまく活用することで負担を軽減することができます
  • 技術者の高付加価値化: 単なる作業員ではなく、ICT建機を操作し、ドローンを飛ばす「デジタル技能者」を育成・採用することで、高賃金でも採算が合う高付加価値な事業構造を確立します。福岡県などの一部地域では、建設業の平均年収が他業種を大きく上回り、年収1,000万円を超える企業も出てきています。

「コンプライアンス」と「仕組み化」による経営基盤強化

「2024年問題」は、コンプライアンスを重視した企業となることを要請しています。

  • 適正な工期と請負金額の交渉: 「2024年問題」を逆手に取り、労働時間の上限規制を遵守するための適正な工期と請負金額を元請や発注者と交渉できる仕組みを構築します。
  • 労働環境の見える化と改善: 建設業法、労働基準法、各種許認可に基づいた適正な管理体制の見直しが必要です。特に、労働環境を改善することにより、若年入職者を確保することが重要な課題です。

M&Aを視野に入れた事業継続戦略

後継者難による廃業は、先人から脈々と受け継がれてきた技術とノウハウの喪失につながります。

  • 事業承継・M&Aの検討: 小規模事業者が多く倒産する今、技術やノウハウを失う前に、M&Aによって後継者を確保する戦略も重要です。これは、単なる売却ではなく、存続と成長のための未来への投資となります。

まとめ

建設業界は今、大きな困難に直面しています。しかし、この逆境を、ICT・DX等推進による生産効率の飛躍的な改善や、M&Aも視野に入れた事業承継を戦略的に実施することで、社会的地位と経済的成功を手にできる新しい時代でもあります。

ただ、日本とアメリカでは各種法令や3K等の企業イメージなど、事業環境の相違が大きいということもあり、単純な比較はできません。特に3Kのイメージは根強く、若年雇用の妨げとなっている面があることから、軽視できません。企業によっては様々な工夫によりイメージ改善につなげて成果が出ているところもありますが、まだ一部に留まっています。今後、更なるイメージ向上の施策を業界全体で取り組んでいく必要があるでしょう。

我々行政書士は、建設業法や各種許認可、契約書作成、補助金活用支援を通じて、皆様の事業を法的に、そして経営的にサポートし、共にブルーカラービリオネアの実現に向けて伴走いたします。

当事務所では、建設業許可を始めとする各種許認可申請や、補助金申請などをサポートしております。
何かお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。
        ⇩
行政書士こやなぎ事務所のホームページはこちら

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

【事務所概要】
行政書士こやなぎ事務所
行政書士 小柳裕之
所在地:埼玉県越谷市南越谷4-11-5 トラビ南越谷6F-23
TEL:048-940-3074
FAX:048-611-9260
mail:お問い合わせ
休業日:土日・祝日・年末年始
対象地域:主に埼玉県・東京都・千葉県

目次