日本政策金融公庫(以下、日本公庫)という金融機関をご存知でしょうか。会社勤めの方だと、名前くらいは聞いたことがあっても、実際に取引があるという方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。
日本公庫とはどんな金融機関なのか。また、日本公庫の「創業融資」はどういった方が活用できるのか。特にこれから事業を開始したいと考えている方、もしくは既に開業して数年程度の方向けに解説します。
日本政策金融公庫って何?銀行とは違うの?
日本政策金融公庫(日本公庫)とは?
日本公庫は、国が100%出資している「政府系」金融機関です。銀行や信用金庫等は民間企業ですね。日本公庫はそういった民間の金融機関が行う融資を補完し、国民生活の向上や国民経済の健全な発展に貢献することを目的としています。
民間の金融機関が手を出しにくい、またはリスクが高いと判断しがちな分野、特に中小企業や農林水産業者、そしてこれから事業を始める創業者への資金供給に大きな役割を果たしています。日本公庫は豊富な融資メニューと全国にある店舗網を通じて、多くの事業者をサポートしています。
創業融資(新規開業融資)とは?
日本公庫の融資の中で、これから事業を始めたいと考えている方、または事業を開始して間もない方(数年以内)を対象としたものが創業融資です。日本公庫では主に「新規開業・スタートアップ支援資金」といった名称で提供されています。
資金の使い道
この融資は、主に以下の使途に利用できます。
- 設備資金:店舗や事務所の建築・購入、機械設備、車両などの購入資金
- 運転資金:商品の仕入、人件費、家賃、広告宣伝費などの当面の事業運営費用
融資の主な要件
| 要件項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 事業計画 | 事業の経験、自己資金の状況、事業計画の実現可能性などが審査されます。 |
| 自己資金 | 融資希望額に対して一定の自己資金を確認されるケースが多いです。 |
審査で重要となるポイント
- 事業経験:創業する事業と同業種での経験や知識が豊富にあるか(無ければ代わるものがあるか)
- 自己資金:創業にあたり、どれだけリスクを負う覚悟があるか(貯蓄の状況)
- 事業計画:売上や費用、利益の見通しが具体的で、返済の根拠が明確か
日本公庫の創業融資を利用するメリット
日本公庫の創業融資には、民間金融機関にはない多くのメリットがあります。
実績や担保がなくても利用しやすい
銀行等、民間の金融機関は創業間もない企業への融資に慎重ですが、日本政策金融公庫は政策的な役割から、担保や保証人がなくても融資を受けやすくなっています。特に「新規開業・スタートアップ支援資金」は原則として無担保・無保証人で利用することができます。
融資の実行スピードが比較的早い
民間の金融機関と比較して、審査から融資実行までの期間が比較的短い傾向にあります。必要な資金をスピーディーに調達できる可能性があります。
金利が比較的低く設定されている
政策金融であるため、民間の銀行ローンと比較して低金利で融資を受けられるケースが多く、創業時の資金繰りの負担を軽減できます。特定の要件(女性、若者、Uターンなど)を満たすと、さらに有利な特別利率が適用されることがあります。返済を一定期間、利息のみとする据置期間を設定することも可能な場合があります。
長期間の返済期間を設定できる
設備資金や運転資金について、長期の返済期間を設定できるため、創業初期の収益が不安定な時期の月々の返済額を抑えることができます。
日本公庫の創業融資のデメリットと注意点
メリットが多い一方で、少ないながらもデメリットや注意すべき点があります。
審査が甘いわけではない
「無担保・無保証人」と言っても、審査は厳格に行われます。特に、事業計画の具体性と自己資金の存在は、最も重要な審査項目と考えられます。計画に甘さがあると判断されれば、融資が否決されることもあります。
融資額に上限額がある
新規開業資金の上限は7,200万円(うち運転資金4,800万円)ですが、創業融資として実際に初めて融資を受ける場合、多くは数百万円〜1,000万円程度の枠内で審査されることが一般的です。巨額の資金調達には向いていません。
面談でしっかりと創業計画を伝える必要がある
融資の可否は提出書類だけではなく、日本公庫の担当者との面談で大きく左右されます。事業への熱意、計画に対する理解度、実現可能性を論理的に、また端的に説明できるようにすることが重要です。
まとめ
創業融資はこれから事業を開始される方、開業して数年以内の方にとって、非常に心強い融資です。そのため、ご自身の事業にしっかりと活用するためにも、以下のポイントを踏まえて融資が実行されるように準備しましょう。
創業計画書(事業計画書)の作り込み
- なぜその事業が必要なのか、競合との差別化は何かを明確にする。
- 売上や費用、利益の根拠を、誰が見ても納得できるレベルまで具体的に作成する。
自己資金の準備と証明
コツコツと貯めてきた自己資金は、創業者本人の信用とみなされます。いわゆる「タンス預金」ではなく、通帳で資金の流れを説明できるように準備しましょう。(通帳がないネット銀行等の場合はweb明細等を印刷で対応可)
必要に応じて専門家に相談
特に創業計画書(事業計画書)に記載する「必要な資金と調達方法」、「事業の見通し(月平均)」は、しっかりと根拠となる裏付けが必要となります。しかし、これまで簿記などの知識がない場合は、計画書の作成に苦戦する方も多いでしょう。融資が必要なタイミングに間に合わないという事態となることも想定されます。
当事務所では、しっかりと創業者様の事業についてお伺いし、創業計画書(事業計画書)の作成から面談のシミュレーションまでサポートいたします。
創業融資を活用したいけど創業計画書の作成にご不安がある方は、お気軽にご相談ください。
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