中小建設業者が取り組むべき「資金繰り安定化」のための3大戦略

目次

はじめに:なぜ今、資金繰り対策が最重要なのか

建設業界は現在、「資材・燃料の高騰」と「人件費の上昇」という苦難に直面しています。

特に中小零細企業様にとって、資金繰りの悪化は即座に倒産リスクにつながります

手持ち資金が底をつけば、どんなに技術力があっても、社員の給与支払い、下請業者への支払い、そして次の仕事を受注するための体力維持すら難しくなります。

もはや、従来の「頑張って安く請け負う」というやり方は、企業の存続を危うくします。
生き残るためには、適正な利益を確保するための戦略的な行動が必要です。

今回はそのために、12月施行の改正建設業法もふまえ、必要となる資金繰り安定化のための3大戦略について解説します。

戦略1:法改正を前提とした「攻め」の価格交渉力強化

建設業における資金繰り改善の第一歩は、「請負代金を適正な価格にする」ことです。
これには、国が進める法改正を最大限に活用し、価格交渉の根拠を強化する「攻めの姿勢」が必要です。

労務費の明示義務化を交渉材料にする

不透明になりがちだった労務費(人件費)を明確化し、適正価格で工事を請け負うための法的な仕組みが整いつつあります。

見積書での労務費明示: 建設業法改正により、受注者である建設業者にも、見積書に「労務費の内訳」を明記する努力義務が課せられました。これは発注者に対し、「この工事を適法かつ安全に行い、社員に適正な賃金を支払うには、これだけの労務費が必ず必要です」と具体的な数字を提示できる交渉材料となります。

コスト増をカバーする「スライド条項」と「工期適正化」

資材高騰リスクを抱えたまま契約することは、資金繰り悪化の大きな要因となります。

  • スライド条項の確実な適用: 契約後に資材価格が急激に変動した場合に、請負代金を増額できるのが「スライド条項(公共工事)」です。民間工事においても、同様の「設計変更、協議の仕組み」を契約に盛り込むことが極めて重要です。
  • 不当な工期ダンピングの排除: 不当に短い工期は、残業代の増加や作業効率の低下を招き、見えないところでコストを増やします。法改正により、不当な工期での契約は明確に禁止されます。適正な工期設定は、無駄な費用発生を防ぐための重要な資金繰り対策です。

戦略2:公的資金で投資を加速する「補助金活用」

企業の体質を改善し、生産性を向上させるための「投資」は、資金繰りが苦しい時ほど後回しになりがちです。しかし、国の補助金や助成金を活用すれば、自己資金を温存しながら、必要な投資を進めることができます。

DX投資を資金繰り改善に直結させる

中小企業にとってのDX(デジタルトランスフォーメーション)は、「無駄な時間をなくし、人件費のロスを最小限にする」ための資金繰り対策です。

  • ターゲットを絞った補助金活用: 事務作業の自動化やペーパーレス化を進める「IT導入補助金」や、生産性向上につながる設備投資を支援する「ものづくり補助金」などは、中小企業様が活用しやすい代表的な制度です。これらの補助金を活用すれば、現場と事務所間の移動削減や、面倒な請求書作成の自動化など、直接的に資金繰り改善につながる投資が可能です。

金融機関の信用向上:経営事項審査(経審)の戦略的活用

金融機関からの融資は、緊急時の資金調達や設備投資において、最重要となります。

  • 経審点数と資金調達: 公共工事を受注しない企業でも、経営事項審査(経審)を受けることで、企業の財務状況や技術力が客観的な点数で評価されます。この点数が高いほど、企業の信頼性が向上し、金融機関からの融資審査において非常に有利に働きます。
  • 点数アップのアクション: 経審の点数は、自己資本比率や利益率などの「財務指標」だけでなく、技術職員の数や福利厚生といった「雇用環境」も影響します。点数アップを意識した財務改善と雇用環境の整備を計画的に行うことが重要です。

戦略3:キャッシュフローを意識した管理体制の徹底

資金繰りの基本は、「手元に現金がどれだけ残るか」を正確に把握することです。利益が出ているのに倒産する「黒字倒産」の多くは、キャッシュフロー管理の甘さが原因です。

  • 入金・出金の「見える化」と早期化: 売掛金の回収サイト(期間)は、可能な限り短縮することが理想です。また、支払い(買掛金)は、支払いサイトを適法な範囲で調整することも検討します。現場で発生する費用や請求書を、リアルタイムで集計し、入出金のズレ(ギャップ)を常に把握するための仕組みが必要です。
    先に説明したDX投資を活用することで、システム投資の負担を軽減できます。
  • 契約による支払い条件の明確化: 取引先との契約書や請書において、支払い条件(回収サイト)を明確に定め、確実に実行することが、キャッシュフロー管理の基礎となります。

まとめ

資金繰りの安定化は、事業者が未来永続的に存続するための最優先課題です。
しかし、中小建設業の経営者は現場と経営に多くのリソースを割かざるを得ない状況となりがちです。

行政書士は建設業許可取得や経審支援による企業の信用力向上や、融資・補助金獲得のための事業計画作成サポートなどにより、資金繰りの安定に寄与しています。

お困りのことがあれば、ぜひご相談ください。
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